映画『思い出のマーニー』
映画館でやっていたときは女の子の友情を描いた百合っぽい話かと思って見に行かなかったけど、地上波で放送したのを見ました。これはかなり面白い!
自分が受けた印象からストーリーを紹介すると
“病気療養で海辺の町に来た少女が誰も住んでいない屋敷に住むという金髪の少女マーニと出会い、友達になる。屋敷の新しい住人によりマーニーの日記が発見される。マーニーは主人公の作り出した妄想かと思われたが、書かれていた出来事と同じことが起こっていた。なぜ読んだことのない日記と同じことが? そしてマーニーの正体とは?”
とミステリーっぽいです。
で、何が面白かったかというと、「コンプレックスの克服」の物語だったからです。
ここからネタバレに入ります。
主人公アンナはいくつか問題を抱えています。
- 養子である
- 人付き合いが苦手
- 喘息持ち
彼女の地雷は「目が青いこと」です。普通で居たいのに普通でないことを指摘されるとかなりキレます。褒められたとしても、そうは受け止められずに相手に対して攻撃的になります。劇中では相手の女の子のことを「ふとっちょブタ」とののしります。
ふとっちょブタさんもこれは地雷だったのでしょう。身体的特徴は自分自身なので一生ついて回るという呪いのような言葉を吐きます。
ただし、ふとっちょブタさんは主人公よりも大人です。きっと幼少の頃からそういうことを言われ続けて多少耐性があるのでしょう。すぐに手打ちにしようとします。ちなみに、作中の男子は心無いことを言いそうな子ばかりです。
さらに、主人公を預かっている家のおばさんはもっと大人です。「ふとっちょブタ」はないわーと笑って済ませています。おそらく彼女自身もそういうことは言われ続けていたのでしょう。でもかなり大人なので全然動じません。
で、「コンプレックスの克服」ですが、これは、マーニーが「私を許して」と言って主人公が「許す」と言ったことで克服されていると思います。その時点では自覚はなかったと思いますが。
おそらく、目が青いのはマーニーからの遺伝、喘息持ちなのもマーニーの遺伝、両親が死んでいるのはマーニーのせい、おばあさんが死んでいるのもマーニーのせい。これらすべてマーニーが原因です。マーニーを許した時点で、それらすべてを受け入れたということになると思うのです。
このコンプレックスの克服というのが面白さの一つです。
次にマーニーの日記の話です。
主人公とマーニーの物語は、日記に書かれたストーリーに沿っています。日記は実際にあったことなので本当の登場人物は違います。前半の物語はマーニーとヒサコさんの話で、秘密の日記部分はカズヒコさんとの話だと思います。マーニーと主人公はお互いに相手になりたいと思っていましたが、それは実はマーニーとヒサコさんのことだったとも推測されます。
そうすると、マーニーはヒサコさんに憧れていたことを孫に聞かせていたので、孫はヒサコさんのように絵を描き始めということも考えられます。マーニーはヒサコさんのようになりたという願いを主人公で叶えていたのですね。そして、主人公自体もマーニーになりたいという願いをマーニーを許すことで自分に取り入れたという。二人の願いを一人に受け継いだとも考えられます。
そう受け止めると話が綺麗にまとまっているなぁというのが面白さのもう一つです。
で、結論ですが、マーニーは名作です。
辻褄の合わない夢物語のような話でしたが、最後にスパーンっと繋がりました。
原作はイギリスの話らしいですが、日本を舞台にすることで、いい感じに収まったと思います。
劇場で観ておけばよかった。