映画『屍者の帝国』
「Project Itoh」の映画第1弾『屍者の帝国』を見ました。
第2弾は『虐殺器官』の予定でしたが、製作会社が潰れたため繰り上がりで『ハーモニー』になります。
作品中の年代が古い順番に公開の予定だったのですが……。
『屍者の帝国』の基本的なところから書きますと、伊藤計劃先生が冒頭を書いたところで亡くなって、盟友の円城塔先生が残されたプロットを元に小説家したというものです。
主人公はワトソン。ずばりシャーロック・ホームズのワトソンです。ホームズとはまだ会ったことはない設定です。他にも有名どころの物語のキャラクターや、歴史上の人物が出てくる架空歴史スチームパンクです。
映画が始まる前に積読にしていた本を読みました。『虐殺器官』も『ハーモニー』も読了済みです。
CGアニメって人の動きに違和感がある場合があるのでが、その独特の動きが屍者のプログラムされた機械的な動きにマッチしていてよかったです。
でも、屍者がほとんどゾンビみたいな扱いでした。首に嚙みつかなくてもいいのに。
ここから、原作と違うところに関してネタバレありです。
映画と原作で大きく違うのは、主人公のワトソンと屍者である記録係のフライデーの関係です。原作だと赤の他人ですが、映画では親友同士という設定に変えられています。
ワトソンの目的としては、親友フライデーの魂を蘇らせることです。原作より個人的な目的がハッキリしているのでいいです。
で、フライデーを蘇らせるために非合法な屍者の研究をして、当局に見つかって、才能を買われて軍属に……と『鋼の錬金術士』のような展開です。
ハガレンは、身体を取られて魂は残ってましたが、『屍者の帝国』は逆に魂が無くなって身体が残っている状態ですね。
で、なんやかやあって、Mの野望が実行に移されます。原作には無かったような気が……。争いのない世界を作るために生きている人も屍者化するように見えました。これは、『ハーモニー』の争いのない世界を作るためにみんなの意識を消しちゃうっていうのに通じるような気がします。
関係ないですが、屍者に魂は蘇らせられるのか?というので、生前のフライデーが合図を送るよって言っていたのは、ギロチンで首を切ったあとで即死するかどうか瞬きで合図をおくるっていう話を思い出しました。
あ、屍者に魂があって苦しんでいるっぽい様子は、『D.Gray-man』っぽいです。
そして一段落ついてエンドロール。
ここで軽くネタバレを喰らいます。今までで登場してこなかった人物の名前が出てくるからです。
エンドロール中にフライデーのモノローグ。ここでハッと気がついたのですが、屍者化したフライデーは意識が無い存在だったのですが、意識を獲得したのです。これは『ハーモニー』で先天的に意識を持っていない人が、後天的に意識を獲得したっていうのに通じるかもということです。
ということで、『屍者の帝国』はそのまま『ハーモニー』に通じるように作られたのかなぁと。『虐殺器官』の公開が未定でも、『屍者の帝国』から『ハーモニー』で完結しているように見えるので、それはそれでいいのかも。
『屍者の帝国』の映画中で、「私を見ているか?」と言っているのは、『ハーモニー』のWatchMeに通じるものがあるかもしれないし(ちょっと強引)。
エンドロール後のエピソードで、一番最後に出てくる人が特に説明がないので、原作を読んでないと面白さが分からないかも。いや、原作と同じとは限らないのか!?
ちょっと疑問なのはM死んだように見えたけど、話繋がるのか?
いろいろ書きましたが、原作を映画向けにアレンジして面白かったです。
自分はアレンジは全然構わないと思います。原作自体も、伊藤計劃先生の原案にアレンジを加えている可能性も高いですし。
あと、推奨される見方としては、フライデー=死んだ人=伊藤計劃、ワトソン=円城塔先生と思うと、物語以上の感慨が味わえるかと思います。
『屍者の帝国』の映画は原作から改変されているらしい。ということで勝手に話を妄想:ヴィクターの手記だと思っていたらフライデーが生前書いていた小説のプロットだった。それを元にワトソンが小説を執筆したら大当たり。フライデーが生前残した長編2本と共に映画化される。というのはどうでしょう?
— 楠樹 暖 (@kusunokidan) 2015, 9月 29